光回線が止まった拠点を、見えなくさせない
こんにちは、NET INNOVATION です。
店舗や倉庫、無人拠点にネットワーク機器や監視カメラを置いていると、必ず出てくるのが「光回線が止まったらどうなるのか」という話です。
機器が無事でも、回線が切れた瞬間に本部からは何も見えなくなります。復旧したのかどうかも分からず、結局現地に人を出すことになります。
UniFi にはこれを避ける仕組みがあります。ところが、Ubiquiti が公式に出しているバックアップ回線用の機器は、日本のストアでは買えません。この記事では、その穴をどう埋めるかをまとめます。
UniFi はマルチWANに対応している
UniFi のゲートウェイは、複数の回線を WAN として扱えます。メイン回線が落ちたらバックアップ回線へ自動で切り替わる、いわゆるフェイルオーバーです。公式ドキュメントでは、WAN は最大8本まで、かつ機器の物理ポート数の範囲内(最低1つは LAN 用に残す)と案内されています。なお後述する LAN 接続方式のモバイル回線は WAN ポートを占有せず、この上限にも数えないと公式に明記されています。
ただし、機種によって事情が違います。当社が製品一覧に掲載しているゲートウェイを、Ubiquiti 公開仕様で整理すると次のようになります。
| 機種 | 初期状態のWANポート | WANに割り当てられる最大数 |
|---|---|---|
| UDM-Pro / UDM-SE / UDM-Pro-Max / UDW | 2 | 8 |
| UCG-Fiber | 2 | 6 |
| EFG | 2 | 5 |
| UDR7 | 2 | 4 |
| UCG-Max / UCG-Ultra | 1 | 4 |
| UX7 | 1 | 1 |
ここが見落とされやすい点です。
- UCG-Max と UCG-Ultra は、初期状態では WAN が1ポートしかありません。 LAN ポートを WAN に割り当て直す設定が必要です(公式に手順があります)
- UniFi Express 7(UX7)は WAN が1つだけで、マルチWAN自体ができません。 本記事の「WAN2 に LTE ルーターをつなぐ」構成は、この機種では組めません
逆に言えば、UX7 以外なら2本目の回線を受け入れる口は作れます。足りないのは、そこにつなぐモバイル回線側の機器です。
公式のバックアップ機器は、日本のストアにない
Ubiquiti はモバイル回線でバックアップするための機器を出しています。公式ドキュメントでは、接続のしかたが 2つの WAN モードとして整理されています。
- Primary WAN:ゲートウェイの WAN1 または WAN2 に直結する。5G Max 系と U5G Backup に限られます
- LAN-Connected Backup Internet:ゲートウェイの PoE 給電対応の LAN ポート(または PoE スイッチ)に接続し、GRE トンネルで通す
公式は後者について、「簡易なプラグアンドプレイのフェイルオーバーを組みたい場合」「ケーブルの引き回しを気にせず電波の良い場所に置きたい場合」にはこちらが推奨される方法だとしています。無条件に推奨されているわけではなく、用途に応じた使い分けです。
いずれにせよ、これらは日本の Ubiquiti ストアでは取り扱いがありません(2026年10月時点)。商品ページの URL を開くと、ストアのトップページへ戻されるか 404 になります。米国ストアには並んでいます。
海外から個人輸入するという手は、おすすめできません。日本国内で電波を出す無線機は、電波法にもとづく技術基準適合証明(いわゆる技適)を受けたものである必要があります。技適のない無線機を国内で使うことは、原則として認められていません。
「光が切れたら拠点が見えなくなる」という不安は、公式の機器だけでは解消できないのが現状です。
当社の構成:日本向けオーダーコードのモデルを WAN2 につなぐ
当社では、産業用 LTE ルーター Teltonika RUT241 の日本向けモデル(オーダーコード RUT241087000 / RUT241287000)を、UniFi ゲートウェイの WAN2 に接続する構成をおすすめしています。
はじめにお断りしておくと、この構成は Ubiquiti が公式にドキュメント化しているものではありません。 公式が文書化しているのは Ubiquiti 製機器を前提とした構成(物理ポートの WAN 割り当て、Ubiquiti の5G機の WAN 直結、LAN 接続+GRE)で、サードパーティの LTE ルーターを WAN2 に挿す構成は公式記事に見当たりませんでした。あくまで当社の設計方針としてお読みください。
家庭用のモバイルルーターではなく産業用を選ぶ理由は、無人拠点に置くことを前提にしているからです。
パススルーで渡すのが要点
単に LTE ルーターをつなぐだけでは不十分です。重要なのは パススルーという動かし方で接続することです。
LTE ルーターを通常どおり動かすと、ルーター自身がアドレス変換を行います。その下に UniFi ゲートウェイを置くと、変換がもう一段重なります。この二重の変換が、拠点間 VPN や SD-WAN の足を引っ張ります。外側からの接続を受けられず、トンネルが張れないことがあります。
RUT241 のパススルーは、公式ドキュメントで「WAN の IP を LAN 側の1台の機器に渡す(最初に LAN に接続された機器、または MAC アドレスで指定した機器)」と説明されている機能です。
渡す相手を MAC アドレスで固定できるため、UniFi ゲートウェイの WAN2 を指定しておけば、他の機器が先につながっても取り違えが起きません。ゲートウェイを交換した場合は、この MAC の指定を更新します。
これを使うと、SIM に割り当てられたアドレスが UniFi ゲートウェイの WAN2 に渡る——というのが、この構成の狙いです。UniFi から見れば回線がもう1本生えているのと同じ状態になり、二重の変換が解消されます。外側から着信を受ける構成(拠点間 VPN の受け側など)では、ここが効いてきます。ただし当社では、UniFi の WAN2 に接続した状態までは未検証です。
パススルーには重大な但し書きがあります
公式ドキュメントは、パススルー(および Bridge)について次のように警告しています。
Using Passthrough mode will disable most of the device’s capabilities. (パススルーモードを使うと、本機のほとんどの機能が無効になります)
どの機能が無効になるかの一覧は、公式に示されていません。ただし、WAN の IP を下流へ渡す動作そのものはパススルーの定義なので、警告が否定しているのはそれ以外の付加機能だと読むのが自然です。とはいえ公式に明示がない以上、以下の機能がパススルー有効時にも使えるかどうかは、実機で確認する必要があります。
| 機能 | 公式仕様での記載 |
|---|---|
| 自動復旧 | Ping Reboot / Wget Reboot / 定期リブートなどの接続監視機能 |
| eSIMの操作 | プロファイルのダウンロードと削除(最大7プロファイル、eSIM対応オーダーコードのみ) |
| SIM の自動切替 | SIM switch(物理SIMとeSIMの自動切替、eSIM対応オーダーコードのみ) |
eSIM 対応モデルなら、物理 SIM カードの到着を待たずにプロファイルを書き込めます。
また eSIM 対応のオーダーコード(RUT241287000)に限り、物理 SIM と eSIM を自動で切り替える SIM switch が使えます。データシートに挙がっている切り替え条件は、電波が弱い・データ上限・SMS上限・ローミング・ネットワークなし・ネットワーク拒否・データ接続失敗です。公式 Wiki の設定画面には、これに加えて SIM 未挿入やオペレーター/国コードによる切り替えなどの項目もあります。モバイル回線側の障害を検知して SIM を切り替える用途では、ネットワークなしとデータ接続失敗が効いてきます。
なお eSIM はプロファイルの書き込み・削除の仕組みであって、通信プラン自体は含まれません(データシートにも does not include data plans と明記されています)。物理SIMモデルの RUT241087000 は eSIM を持たないため、SIM switch は使えません。
ただし繰り返しになりますが、これらがパススルー構成でそのまま使えるとは限りません。 自動復旧・eSIM の操作・SIM switch を前提に設計する場合は、事前の検証が必須です。当社でもここは実機確認の対象としています。
設置環境は動作温度だけで判断しない
動作温度 -40〜75℃ という数字から「盤内でも屋外ボックスでも置ける」と考えたくなりますが、メーカーの安全上の注意はそれを許していません。
公式のクイックスタートガイドには、次の指示があります。
- 放熱の悪い密閉環境で使用しないこと
- 換気が制限される場所で動作させないこと
- 直射日光を避けること
- 雨や湿気の多い場所にさらさないこと(湿度10〜90%・非結露)
RUT241 の保護等級はデータシートで IP30 とされており、屋外定格の筐体ではありません。盤内に収める場合は、放熱・換気・防水を別途確保した上で設計する必要があります。動作温度レンジは「その条件下でなら動く」という意味であって、設置形態を保証するものではありません。
有線ポートは 10/100 Mbps
ギガビットではありません。公式データシート(v1.51)では 2 x RJ45 ports, 10/100 Mbps(WAN 1・LAN 1)と記載されています。
一方でモバイル側は 4G LTE Cat 4 up to 150 DL/50 UL Mbps なので、下りは有線ポートのほうが先に頭打ちになります。 バックアップ回線として割り切る構成なら実用上の問題は出にくいですが、「平常時もサブ回線として帯域を使いたい」という用途には向きません。ここは期待値を合わせておく必要があります。
技適の扱いについて。 公式データシート(v1.51)の Regulatory 欄には Giteki が挙げられており、日本向けの標準パッケージとして RUT241087000(物理SIM)と RUT241287000(eSIM)というオーダーコードが記載されています。対応バンドも日本の 4G LTE-FDD(B1 / B3 / B8 / B18 / B19 ほか)です。
ただし、どの認証番号がどの無線部に対応するかまでは公開資料から追い切れていません。調達時は、日本向けオーダーコードであることと技適表示を販売店に確認してください。
当社のクラウドセキュリティSIM と組み合わせられます
バックアップ回線に使う SIM は、当社のクラウドセキュリティSIMをそのまま使えます。
固定IPを付与するプランを選べば、パススルー構成でそのアドレスが UniFi の WAN2 に渡る想定です。固定IPなら外部からの着信も受けられるため、拠点間 VPN や SD-WAN の受け側に使える構成になります。ただし、UniFi の WAN2 に接続した状態での切り替え動作は当社でも未検証です。
あわせて、クラウド上のセキュリティフィルタを経由する構成なので、バックアップ回線に切り替わっている間もフィルタリングが効いたままです。普段の光回線では守られているのに、非常時のモバイル回線だけ素通し、という状態になりません。
回線(SIM)・LTE ルーター・UniFi 側の設定を、窓口をまたがずにまとめて相談できる点も、実務上は小さくない利点だと考えています。
現時点の検証状況について
正直にお伝えしておきます。
当社でこれまでに確認できているのは、固定IPプランのSIMで、LTE ルーター側のパススルーを有効にした状態で、下流の PC にそのアドレスが付与されるところまでです。UniFi ゲートウェイの WAN2 に接続した状態での切り替え動作は、これから実機で確認します。
あわせて、公式が「パススルー有効時はほとんどの機能が無効になる」と警告している点についても、どの機能が実際に使えなくなるのかは未確認です。
そのため、この記事では「動作確認済みの構成」とは書いていません。構成の考え方と、機器を選ぶ際の判断基準をまとめたものとしてお読みください。実機での確認が取れ次第、結果を追記します。
まとめ
| 論点 | 現状 |
|---|---|
| UniFi 側の受け入れ | UX7 を除けばマルチWAN可。UCG-Max / UCG-Ultra はポート再割当が必要 |
| 公式のモバイル回線機器 | 日本のストアでは取り扱いなし(2026年10月時点) |
| 公式の接続方式 | WANモードは2つ。Primary WAN(WAN直結)は 5G Max 系と U5G Backup のみ。LAN接続+GRE は簡易構成・設置自由度を求める場合に推奨 |
| 個人輸入 | 技適のない無線機は原則として国内で使用できないため、バックアップ回線用途には推奨しない |
| 当社の構成 | RUT241 の日本向けモデルを WAN2 へ、パススルーで接続(公式ドキュメント外・WAN2 での切り替え動作は未検証) |
| SIM | 当社のクラウドセキュリティSIMを利用可能。固定IPを付与するプランなら WAN2 に固定IPが渡る想定(未検証) |
「光が止まっても、拠点の機器とカメラは見えていてほしい」という要件は、公式機器が手に入らないからといって諦める必要はありません。
回線の選定から、LTE ルーターの設定、UniFi 側のフェイルオーバー設定、切り替え試験まで、営業を介さず現役のエンジニアが直接ご相談を伺います。NET INNOVATION までお問い合わせください。お見積りは無料です。
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参考リンク
- WAN Failover, Load Balancing and Port Remapping on UniFi Gateways(Ubiquiti Help Center)
- UniFi 5G and LTE Backup Best Practices(Ubiquiti Help Center)
- Teltonika RUT241 製品ページ
- RUT241 データシート v1.51(Teltonika/本記事の仕様引用元)
- RUT241 WAN 設定(Teltonika Wiki・Passthrough / Bridge の仕様)
- RUT241 モバイル設定(Teltonika Wiki・SIM switch の条件)
- RUT241 クイックスタートガイド(Teltonika Wiki・安全上の注意)
- 技術基準適合証明等を受けた機器の検索(総務省 電波利用ポータル・調達時の確認用)